| 春の屋上は暖かくて気持ちが良かった。本当は立ち入り禁止のはずで、僕らの他には誰も居ない。猿野くんが大きく手を広げて僕を振り返る。 「なあ!」 春一番に負けない声で猿野くんが笑う。僕も笑って、バババババとまるでヘリコプターみたいな音を立てる風と戦った。猿野くんの学ランが風になびいて空を遮る。グルン、とまるで風に煽られたみたいに猿野くんが回った。両手を広げて、楽しそうに。見えない何かと遊ぶみたいに。 「今なら、空だって飛べそうじゃんか!」 風向きが変わった。西から吹く風は、桜の花びらを盛大につれてきた。猿野くんの姿が見えなくなるくらい、桃色が視界を埋めつくす。桜の中を泳いで、ちらりかいま見えた手を掴む。 「捕まえた」 もう飛べないっすよ。そう悪戯めかして言えば、一緒に飛んでやる!と猿野くんが跳んだ。 |