雨と無音


 いつものように獅子川くんと校門を出る。鹿目くんがわざとボールを一宮くんに向かって投げていただとか。猪里くんの持ってきてくれた野菜が美味しかったとか。
 たわいない話をほんの10分か15分かの帰り道で話す。
 とても短い、でもかけがえのない暖かな時間。
 ふと会話がなくなって、二人で時間を惜しむように会話を探す。何かなかったっけ、楽しいこと面白いこと変わったこと見つけてはホッとして、また話す。
 でも何故か今日は話が続かなくて、沈黙。
 獅子川くんといるときにそれに遭遇したこと無かった僕は、酷くそれを恐れていたことに出会ってやっと気付いた。
 でも、
「……」
「……」
 なんだか、何故だか、悪い気がしなくて。
 隣にいる獅子川くんの体温が、雨の日の寒さに染みるように暖かい。なんとはなしに周りをを見て、まだ雨は降ってて、沈黙を楽しんでいた。

 でも獅子川くんは違うのかな、ってふと気付いて。伺うように、見る。彼もなんとはなしに周りを見ていて、表情は無くて何もわからなかったから、少し、疑って、哀しくなってしまって。
「……」
 俯いた僕を待っていたかのようなタイミングで、獅子川くんはこっちを見て笑って
「たまにゃあこんな日もイイ、よな」
 さっきの哀しいのが嘘みたいに、嬉しくなって微笑ってそうだねって返事して、また傘の外を見た。シトシトと雨が降っていて曇り空が重くのしかかっていて、でも悪くないなと水溜りを踏んで。