運命
「たくさんたくさん走ってね
息が切れても走ってVRも使い果たして
それでも走るの。
山が見えるはずでね、登るんだよ。
えっちらおっちらって登るの。
兄ちゃんが降りて来―いって怒鳴っても
キャプテンがお星様みたいにキラキラ呼んでても
蛇神先輩が何か怖いもの出してても絶対降りないんだよ。
登るの。
やまはえいえんじゃないからいつか頂上につくはず。
一番高いところに行ったら手でらっぱを作って
「ねぇ、シバくんはどこにいるの?」
お空の上の神様にきくんだ。
カミサマは優しいはずだから、きっと、きっと、僕にシバくんの居場所を教えてくれる。
そして僕は降りて走るんだ、そう。
川を越えて丘を越えて小鳥さんに道を聞いて。
走って走ってまた走るの。
シバくんを見つけるまで、
僕、たぁくさん、たぁくさん走るよ。
きっと僕らはそんな風にまためぐりあうんだ。
そういうの、なんて言うか僕知ってるよ。
シバくんにも教えてあげようか?
ウンメイ、って言うんだよ
運命、っていうちからがぼくらをまた仲良しにしてくれる。
きっときっと見つけるから。
シバくんが悪いやつに攫われても大丈夫だよ。
ね、シバくん」
そういって、こちらを向いて比乃が笑んだ。
夏の、風の中で蝉が鳴く。
僕が頭を撫でると比乃はどこか満足したようにピョン、と公園の短い階段を飛び降りた。
じゃあ僕も君を探そう、と少し駆け足で降りて小さく呟くと、入れ違いになっちゃうかもね、と比乃がクスクス笑った。
平気だよ、運命なんだから。
僕らは、とっておきの告白みたいに運命という言葉を囁きあった。