ひどい音だった。間近から飛び立つ飛行機は、なるほど騒音というものは厄介だと思わせる。
片耳を塞ぎ、靡く髪を懸命になだめながら、僕は動くわけには行かなかった。なんのためにあるのだろう、飛行場の傍には、何もない草ばかりが生える場所が必ず用意されている。
そこに座り込む猿野くんの背は、何故だか、きっと小さい頃の彼もそうしていたのだと、僕に思わせた。
上昇していく飛行機は、打ち上げられた球よりも遠く早く、空の彼方に消えたまま戻ってこない。それが僕らが気にする飛行機なのか、そうじゃないのか、空は手がかりを残してくれなかった。昨日の夜、目を瞑ったまま、ぼそぼそと呟いた猿野くん。
「黄泉が、オレに、来いっつうんだよ」
それだけだった。黙り込み、僕らはしばらく寝返りを繰り返していた。僕は猿野くんの返事を知らなかったし、猿野くんは、きっと僕が知らないことを知らない。暗黙の了解を知らないうちに壊してしまうことが怖くて、何も知らないのに知ってる振りを二人ともしていた。それだけは二人とも知っていた。
猿野くんは、何機飛んでも身じろぎもしなかった。どれに誰がいるのか、もしかしたら誰もいないのか、僕らは知らずに、ばかのように、青空が飛行機に切り裂かれすぎて、血を流し始めるまで見ていた。
「行かねえって、すぐに言えなかった」
そこでやっと僕は、知った。猿野くんが後悔していたのは。ついていかなかったことでなく。
少なくとも僕は、どんなに悩んだとしても、行かないでくれたことだけが嬉しいとは、やはり言えなかった。