ノックする音が空耳だといい

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 久々の喧嘩だった。とは、久しぶりに、笑って許せなかったということだ。そもそも、自分たちは相性が悪い。散らかし性の彼と、部屋は綺麗じゃなくちゃ落ち着かない自分。別に外食も嫌いじゃない彼と、一日二食は家でじゃないと食べたくない自分。こんな合わない自分たちが、一緒に暮らせるはずもなかった。そうだ、初めから無理だったんだ。常々からの歪みが、ここに来て発露したに過ぎない。これは岐路であり決定打であり、常なる道へ戻らせる線路でもあるのだ。何を期待しても、仕方ない。
 だから控えめに鳴るノックの音は、あきらめ切れない僕が描いた幻想であって、彼が謝りにきたわけじゃない。


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