空っぽな雲の切れ目

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「あー綿飴、喰いてぇ」
 夏の晴天、分厚い白雲を寝そべって見上げながら、お弁当を平らげたあとだというのにお約束のセリフを猿野くんが呟いた。ペットボトルのお茶を一口含んで、汗を拭ってから
「もう少しで、お祭りがあったはずっすよね」
 と、僕も無難に返事をする。特に意味のあったことではないのか、猿野くんは、ふうんと鼻で返事をした。僕の手からペットボトルをとって、口をつける。
「あの中ってさー、空っぽなんだってな」
 てっきり綿飴の続きかと思って、ひどいぼったくりの店の話だと思ったのだけど、視線の在り処に雲だと察せた。
「地学のタコが言ってた」
 空っぽと言っても、水蒸気やら何やらが詰まっているだろうし、本当に空っぽということはないと思うのだけど、その気持ちはなんとなくわかる。
「あんなにふわふわしてて、食いごたえありそうなのに、空っぽなんだってな」
 心底残念そうに、猿野くんが呟いた。

 昼休みが終わって、5限を教室で過ごしたあと、部活のために飛び出した空は雲ひとつなく真っ青で。きっと、空の上の、食べこたえのないことを気にしない誰かに食べられてしまったのだろう。
「あー、もう中身なくてもいいから、綿飴食いてえ」
 きっと、猿野くんみたいな食いしん坊に。


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