ああ、金色が光っていると、寝ぼけながら眼鏡のない視界で思った。寝ぼけさせた張本人は、にいと窓の向こうで笑っている、らしい。
 半分瞼を閉じたまま欠伸をし終えた白雪は「で?」と、窓枠に手をつき、窓の向こうで上機嫌の大神に布団の上に座ったまま尋ねた。
「練習休みじゃん? ピクニック行こ! ってこと!」
「いまから?」
「そう!」
 頭が痛くなってきた。予期せぬ目覚めに付き合わされた瞳に、陽射しが強く突き刺さる。
「誰が?」
「おれと白雪が!」
「いつ?」
「だから……いまから?」
「却下」
 窓を閉める。と、喚き声が五月蝿い。けれど寝れないこともない。ただいま10時半。今日は半休で、部活は1時から。少なくとも11時には起きようと思いながら、容赦なく瞼を降ろした。
 諦めたのか、喚き声も何時の間にか消えていた。うとうととそれを感じて、安堵する。
 スパンッと襖が開いた。
「ああっ! 寝るなよ!」
 乱入者は半分は間違いなく眠りの国に落ちていた白雪を無理やりに揺さぶる。対応しきれず、うう、と白雪はうめき声を上げて瞼を抉じ開ける羽目になった。
「なんでここに……」
「おばさんが入れてくれた! ってこと!」
「帰って」
 にべもない言葉も通用しない。
「だから、ピクニック!」
 もう、だめだこれは。追い返しているうちに、部活の時間が訪れるだろう。
 諦めて白雪は起き上がり、枕もとの眼鏡を手に取った。間近の大神の笑顔がはっきりする。
 さいごに、足掻いた。
「……どうしても?」
「どうしても!」
 大神は断言する。仕方ない、こんな破天荒な人間とバッテリーを組んだのが自分の運の尽きだ。
「で? どこに行くって?」
「公園!」
「近くの?」
「遠くの! 自転車で!」
「……待って、いつからだっけ?」
「何が?」
「そのピクニック」
「だーかーら! いまから!」
「それはさあ」
 まさか、まさかとは思うが。
「部活の時間までに帰ってこれる計画なの?」
「へっ?」
 頓狂な声とともに、長い睫がぱちぱちと瞬いた。
「ぶかつ? さすがに明日までには帰ってこれっけど。白雪は泊りがいいのか?」
「……今日は、半休であって、全休じゃないよ?」
 ぴん、と、大神が動きを止める。
 なんどか首を傾げて、部屋にかかるカレンダーを見。
「……あれ?」
 白雪はさっさと背を向けて布団を被りなおす。
「はやく出てけ」
「わーっ! ごめん、ごめんってばー!」
「うるさいな、僕はもう寝るんだよ」
「おれが悪かったって! 近くでいいから行こうぜー」
「うるさい」
 腕を掴むと、静かになった。ああ、こうすればいいんだ。寝ぼけた頭がしずかに答えを出す。腕を引いて引き込んで「おやすみ」とささやくと、それきり起こされずに済んだ。