居ない間もちゃんと、君はここに居てくれている

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 それはひどい思いだ。
 人を愛することは素晴らしい。
 人類の叡智だ。求めぬ無償の愛は、この青い星の何よりも美しい。
 じゃあ、一番醜いのはなんだろう?
 独占を望む愛だ。他人は他人。全てを、自分のものにすることはできない。そんな簡単なことがわからない無知が、なにより見苦しいんだよ。
 ああ、不快になるのはやめてほしい。当然わかっているであろうと思っていても、前提の話だよ失礼。
 ただどんなに賢い人でも、愚かな瞬間は楽しげに肩を叩く。愚と智が混ざり合うときがある。不可能を信じるからこそ、耐え切れなくなるときがある。
 ここに一つの恋人同士がある。恋は全ての知を命じた。けれど過去は無理だ。諦めた。大切なのは、未来と現在だ。
 その未来と現在さえ、二人は(いやこの際、片方が片方のことだけでもいい)すべてを知り、いつも共に在れるか?
 答えは否だ。
 
 ……普通はここで終わる話だね。そう、踵を返し、あの灯りへ戻ろうとした君は賢い。賢者の素質があるね。けれど、世の中には、終わり良い時で終わらない物語もあるんだよ。
 映画でENDと銘打たれても、人生は続いていくだろう? シンデレラはあのあと、姑に苦しめられたかもしれない。白雪姫は、死んだ魔女の呪いで腐り殺されたかもしれない。それが終わりなきうつくしい物語だね。
 否と結論を出しても、諦めることが出来なかった人が居るように。


 とてもかわいそうな人の話をしよう。ほしいものの少なかった人を語ろう。好きな人がいたんだね、とてもとても愛していたんだ。相手が愛していたか? そんなことは問題じゃない。何を言われようと、彼は信じることなど出来なかったのだから。その男は、いつも部屋に二人で閉じこもっているわけにはいかなかった。けれど愛する人には、いつもいつでも戻るべき場所に居て欲しかったんだ。
 現代の話だよ。どんなに亭主関白を気取っても奥さんを一歩も外に出さないことはできないよね、本人が望めば、外出ができないはずもないよね。物理的に出られなければ、周りが心配することもあるだろう。
 けれど、おおきな力があればどうだろう? それを利用できる知恵があればどうだろう? 本当に、人が人を支配することは不可能かな?


「ねえ、まだ会えないんスか? ずっとこうじゃないスか、病気ってどんな? あの人が病気になったって聞いてから、オレら一度もあえてないんスよ。どんな病気なんスか? 治んないんスか?」
「……言ッたろ、オレ以外には、会いたがらねえんだ。病気の自分、後輩にゃ見せたくねえだろ。ちょッと、待ッてやれ」


 もしも相手が、普段から自分に依存していたら。もしも自分の執着が、周りから軽く見られていたらそれはきっと、可能だ。
 ――だって、ここに証拠がいるものね。 次はいつ来てくれるの?


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