きつく目を閉じて堪えたのは内緒

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 久々に尋ねてきてくれた彼は、やっぱりぼろぼろだった。とりあえずシャワーを浴びてもらって、僕はお茶の準備をする。One for person, one for pod。カップも暖めて、準備は万端だ。
「風呂もらったぜー」
 橙色の髪から、白い湯気を立たせて、獅子川くんがドアを開けた。貸したシャツは、びちゃびちゃと拭いきれて居ないのを、切実に訴える。いまさら、驚きも咎めもしないけれど。こうして綺麗になると、やっぱり獅子川くんだなあと、思わず笑ってしまった。
「お茶、飲むよね?」
「おう」
 勝手知ったるとばかりに、獅子川くんはソファに腰を降ろす。実際この部屋に通したことないのだけど、そういう遠慮の無さが好ましい(ただ単に、違う部屋だと気付いていないだけかもしれない)。
「結婚すんだッ」
「え?」
「つうか、した?」
 カップから溢れてテーブルを流れる紅茶が、絨毯にしみこんだ。
「誰が?」
「オッレ以外、誰がいんだよ」
「いつ?」
「先週」
「誰と?」
「お前の知らねえ女」
 傾け続けたポットを紅茶の海と化した机において、僕は頭の中が呆けたまま、きつく閉じてしまった目をあけた。ええと、なんだっけ、言うべきこと。
「おめで……とう?」
「ありがとなッ」
 幸せが溢れさせて、獅子川くんが笑った。


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