「子津……っ」
 自分の切羽詰った悲鳴で目が醒めた。動悸が収まらず、呼吸も落ち着かない。寝巻きのTシャツがべたりと鎖骨に張り付いている。
 畳に直角で交わる障子からは、薄い早朝の光が差し込んでいた。
「猿野くん……?」
 隣の布団で寝ていた子津が声に飛び起きた。焦燥する猿野に手を伸ばす。
 肩口に指先が触れた途端、猿野が泣きそうな目で子津を見た。
「子津ぅ……」
「ど、どうしたんすか?」
 怖い夢でも? そう、顔を覗きこんで冷たい手を握り締める。力を込めて両手で握り返し、猿野は子津の目を見つめた。
「お前ん家、座敷牢とかないよな?!」
「へ? な、ないっすよ。だいたい、家で猿野くんの知らないことなんかないっすよ。心配なら、今家中を歩いて確かめてもいいっすよ?」
 怯える様子に、弟をなだめるような口調で言い聞かせる。
「ほんとに? マジで? 嘘ついてねえ? 絶対に絶対?」
「嘘って……ああ、エイプリルフールは昨日っすよ。そんな心配、しないでくださいっす」
 怖い夢で起きるなんて、猿野くんにも可愛いところがあるんすね。そう、子津が笑う。なんとも言えず、情けない顔で猿野は子津の手を握り締めていた。