はっと目を覚ます。あまりの勢いに「なんやの、2人とも。うっさいわあ」と隣の女子に文句を言われた。
 逆隣を見てみれば、自分同様、蓮角が寝起きの瞼で呆然としている。世界史の授業は残り5分を切ったところだ。
 2人、目を合わせ、何かを悟り立ち上がった。
 教師の誰何の怒声に声を揃えて「糞!」と答えて、屋上への階段を駆け上る。
 錆びた鍵を壊す勢いで抉じ開け、中から閉めた。「邪魔は入らんぞ!」と振り返り怒鳴ると、既に蓮角は座る余裕もなく携帯電話を弄り始めていた。
 鷹羽も同様、学ランのポケットから取り出しリダイヤルから目当てを探すものの、めったにかけないことに気付き電話帳からの検索に切り替える。コール……でない。
 蓮角は通じたらしかった。「鵜相?!」と取り乱した声が聞こえる。
「なあ、先輩が悪かった、ほんに堪忍しといて、もう嫌がることとかせんから、冗談で道具使うとか言って鵜相が怖がってんの見て喜こばへんから、鬼畜になるのだけはやめて鵜相……! 可愛く蓮ちゃん先輩呼んで! 蓮角とか呼び捨てにせんといて! オレSやからMは無理やねんほんまに! 嫌いとか冗談でも言わんといて!」
 蓮角は蓮角で中々ハードな目にあっていたらしい。
 その手元の白銀の携帯の中から「はあ? 何言うてんですか蓮ちゃん先輩」と狼狽した鵜相の声がここまで零れている。思わずそちらの会話に意識を向け始めたとき、こちらの携帯も繋がった。
『……なんですか、一体。まだ授業中でしたよ』
 不機嫌な声に、伺う響きが含まれている。いつもの鴨神だ。思わず、鷹羽はそっと息をついた。
「……あんなあ、わいが悪かった。謝ったる。えろうすまん」
『い、いきなりどうしたんですか? そんなに殊勝な態度、あなたらしくもないですよ。そうですね……大方、道に落ちてた焼き鳥でも拾い食いしたんでしょう』
「んなわけあるかい! ……いやもう、それでええわ。おう、お前はそれでええ」
『鷹羽さん……?』
 訝しげな問いかけが携帯の向こうから染み出てくる。わしが間違うとった、可愛くなくてええから、そのまんまのお前でええから
「おまじないだけは……やめてくれや」
『はあ?』
 蓮角の携帯からと、鷹羽の携帯から。2つの疑問符が綺麗に揃った。