アリス、アリス!
鎧な蠍
針の森はそれからも続きました。歩いても歩いても、針葉はさらさら落ちてきます。
やっと落ちてこなくなったと思ったら、目の前には、水に浸かった砂漠が広がっていました。
海の底に、砂漠があるのかと思いました。青い何かが、砂の上に沈殿していると思いました。それは果たして錯覚で、病気の人の顔色のような月の光が、全てを染め上げているだけでした。うねり、山になり、凹み、砂漠は地平線まで埋め尽くしています。ときどき一人でに山は崩れ、別の場所に盛り上がりました。
「とりあえず、こんなところで何をしている?」
砂からつのを覗かせた、さそりさんが言いました。堅くて強そうな、鎧を纏っていました。
「ハートの王様のところにいくんだ」
「ずいぶん遠いぞ。とりあえず、やめた方がいいんじゃねえか」
「みかどさんを、探しに行くんだもん」
さそりさんは俯きました。何事か、考えているようです。長い間、静かでした。
「とりあえず、砂漠の出口まで、送ってやる。ついてこい」
「ありがとう」
怖い顔をしているのに、優しいさそりさんのようです。けれどさかさか砂の上を振り返りもせずに歩くので、ついていくのは大変でした。
「後ろ、振り向くんじゃねえぞ」
そういう性格なのかと思っていたら、こちらを、後ろを気にしないのはわざとのようです。
「どうして?」
「何か、ついてきてる。急いでるな、捕まえる気かもしれない。心当たりは?」
帽子屋さんでしょうか鼠さんでしょうか? それとも双子さんたちでしょうか? それにしても、彼らに僕を追いかける理由があるのでしょうか。
「……わかんない」
「振り切ったほうがいいか」
「わかんない」
砂を踏む音が考え込んでいました。
「少し、急ぐぞ」