アリス、アリス!

We are friends! だから警告。

(君は、僕の言うことがわかるんだね)
 ざくざく、砂をかきわけながら、司馬くんが言いました。
「どういうこと?」
(ああ、君は―――なんだね)
 とつぜん、砂嵐が吹いて、司馬くんの声を攫ってしまいました。首を傾げますが、二度言ってはくれません。
(何か、持ってるね?)
「んん?」
(ここに来てから、何かもらったでしょう)
 僕はポケットの中から、邪魔だったので3センチぐらいに縮めたキセルと、返しそびれてしまった碁石、そして餞別にもらった小枝を取り出しました。
(少し、たりないね)
「必要なんだ?」
 司馬くんがにっこり笑うだけなので、僕はそれらをまたポケットにしまいました。
 大きな山を越えると、眼下には一面に野原が広がっていました。点々と聳え立つ、木のような柱のような……
「きのこ?」
 さきほどまでの、水底の夜とは違い、鴉の羽根に包まれたような暗闇の中長々と、高々と、きのこが聳えています。それはそれは、大きなきのこです。まだ1ヤードも近づいていないでしょうに、僕にはその笠がもう見えません。
(気をつけてね)
「何を?」
(悪い人……じゃないの、とっても悲しいだけなの)
「誰のこと?」
 司馬くんは、黙ってしまいました。本当に黙ってしまいました。何も言ってくれません。
 そういえば、砂漠の端までの約束なのですから、足元の砂のふかふかが減ってきた今、もしかしたらお別れを言われるのかしらと僕はどきどきしました。
 司馬くんは、黙っています。ふと、顔をあげてゆっくり言いました。
(砂漠が終わっても、一緒に行ってもいい?)
 普通なら、いいの? と聞き返すべきなのに、
「お願い、一緒に行こう!」
 と即答してしまったのは、そういう不安の最中だったので、仕方の無いことなのです。
 きのこは近づいても近づいても、近づいているようには思えませんでした。何しろ、大きすぎるのです。靴裏に感じる砂がどんどん薄くなっていってくれなければ砂漠の終わりに近づいてるのか、先に進んでいるのか、到底わからなかったでしょう。
 やっとふかふかの苔の上に足を降ろすと、振り返った司馬くんが一握り、砂漠の砂を持っていた小瓶の中にいれました。