「ううわー、大混線」
 公園のベンチから、途中合流した御柳(中身は辰羅川)、辰羅川(御柳)そして子津(猿野)、猿野(司馬)が並んだ図を見上げ、なんといったらわからず、とりあえず兎丸はそう言い放った。
 犬飼の脆い精神はそろそろ耐え切れなくなったらしい。1人集団を離れ、隅っこで立ちすくんだままさきほどから誰とも目を合わせない。握り締めた拳が恐怖を抑えるように小さく震えていた。
「混線言うな、チビ」
 辰羅川が柄の悪く、そう眉を潜める。
 御柳くん、そんな言い方はないでしょう、と御柳が困ったように眉間に皺を寄せた。根性悪そうなたっつんとかマジ稀少! と子津が無神経に叫び、猿野といえば情けない笑みで場をやりすごそうとしている。
「つうかさ、めがね邪魔なんだけど。持ってろよ」
「邪魔だなんて……ああ、投げないでください! なんてことをするんですか」
 放り上げられた眼鏡を掬い大事そうに御柳が抱える。辰羅川がつまらなそうに品のない舌打ちをしながら辺りを見回した。普段眼鏡の奥に隠れている黒目は、どうも焦点のあっていないらしい。身体的に無理なそれを力ずくで合わせようとしているのだろう、さっきからただでさえ良いとはいえない目つきが3割り増しで悪くなっている。
「ほら、見えないでしょう。危ないですからかけていてください」
「やだ。邪魔だし」
「たっつんがやだとか言った!」
「うっせえよお前の奇行もよっぽどだっつの!」
「何をー?! どこが奇行だ?!」
「兄ちゃん……白鳥の湖の衣装の自分なんて見たら、子津くん世を儚んじゃうかもよ……」
 収拾のつかなくなってる事態をとめようと、普段はボケたり打ったり忙しい両手のひらがみなに向けられたが、何か言いたげにしても大騒ぎの一行に伝わるわけもないし、よしんば伝わったところで止まらない。口をつぐんだ、その上の目は事態の混乱に潤んでいる。
 今にも泣き出しそうな自分を堪えるその風情は、とうてい猿野の見た目に似合わなかった。犬飼の震えが大きくなる。
 ため息をつき、しょーがない、まともなのは僕だけだ、と兎丸は声を張り上げた。
「ねー、とりあえず子津くん回収にいかない? たぶん司馬くん家にいると思うんだよねー」
「ご家族の方にはどう説明するんですか?」
 言いながら御柳はかけてもいない眼鏡のつるを上げようと手を顔にやり、勢い余って眉間を指でついた。
「司馬くんち、今日お父さんとお母さん、お仕事お休みじゃないから誰もいないよね?」
 確認されて猿野の顔がこくこくと頷く。
 たしかに、ここで喚いていても実りがあるとは思えなかった。
 知らぬ人から見ればただの若人の集団だが、知る人が見れば奇妙極まりない寄り集まりがぞろぞろと公園を出て行く。